東京地方裁判所 平成11年(ワ)9104号 判決 2000年6月26日
《住所略》
原告
甲野太郎
右訴訟代理人弁護士
藤本健子
《住所略》
被告
金沢義秋
《住所略》
被告
森好文
《住所略》
被告
平島稔
右訴訟代理人弁護士
川口誠
主文
本件訴えを却下する。
訴訟費用は、原告の負担とする。
事実及び理由
一 本件訴えにおける原告の請求の趣旨は、「被告らは、連帯して株式会社ジャレコに対し、1億1371万8020円及びこれに対する訴状送達の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。」というものであり、その請求原因とされている内容は別紙のとおりである。
二 当裁判所は、被告らからされた担保の申立により、平成12年5月8日、原告に対し、被告ら各自のため、本件訴えの提起にかかる担保として、当該決定の確定した日から14日以内に各1000万円の担保を提供することを命じる旨の決定をした。右決定は、平成12年5月15日原告代理人に送達され、同月23日確定した。しかるに、原告は、右決定の定める担保を供すべき期間内に担保の提供をしない。本件訴えは、民事訴訟法81条において準用する78条により却下することとし、訴訟費用の負担につき同法61条を適用して、主文の通り判決する。⑯民事第8部
(裁判官 河本晶子)
別紙
請求の原因
一、原告は、平成10年6月から引き続き本店東京都世田谷区用賀2丁目19番7号所在 株式会社ジャレコ(以下、訴外会社という)の2000株の株式を保有する株主である(甲第一号証の一、二)。
二、被告金沢義秋は、昭和49年10月3日の設立当時から今日まで、右会社の代表取締役をしており、被告森好文は、昭和62年6月5日以後、被告平島稔は平成5年6月29日以後、今日まで両名共右会社の取締役である(甲第二号証の一乃至三)。
三、1、訴外会社は、代表取締役金沢義秋が昭和46年2月以来の娯楽機械の個人営業を昭和49年10月、法人として設立し、事業としては(1)業務用ゲーム機器及びソフトの開発、販売(2)家庭用ゲームソフトの開発、販売 (3)アクアリウム用品 (4)その他(アミューズメント施設の運営、ポップコーン自動販売機営業、船舶用コンテナのリース、生活文化関連製品)に大別される。
2、業務用ゲーム機器では、中型上位であるところ、家庭用コンピュータゲームソフトで高度成長を遂げ、店頭登録に至っている。主力を徐々に業務用にシフトし、またゲームセンターも直営するなど多角的な経営をなしている。
四、1、ところで、被告等は、共謀の上、粉飾決済をするため、訴外会社が下請け業者に対し、架空の経理処理を強要する等して、株主や債権者を偽罔して、株式市場も、右虚偽の決算処理により、不当に株価を吊り上げる等のインサイダー取引を行って来た。
2、訴外会社は、下請け業者である株式会社アイマックスと、平成8年7月30日、「なんでもシール委員会」に関する共同開発販売に関し、契約を締結したが(甲第五号証)、「なんでもシール委員会」の単価は、金68万円であるところ、伝票上の操作上、金98万円の販売価格を修正し、平成8年12月より平成9年3月までの「なんでもシール委員会」の商品出荷台数は、400台であるところ、右単価の差額に400台を乗じて、消費税を付加すると金1億2360万円が架空売上となる。
3、また、平成9年3月においては、訴外会社は、訴外株式会社アイマックスに対し、プリンターのない「なんでもシール委員会」を金83万円の販売価格で、150台の売上協力を要求し、商品納入など存在しないにもかかわらず、河久保運輸倉庫に架空納品書、受領書などを作成させる等して操作し、伝票上架空売上の取消処理をして帳じりを合わせた。
4、その他、被告等は、訴外株式会社朋夢等十数社にその有利な立場を利用して、下請業者に対し、架空の売上計上を強いてきたものである。
5、被告等は、前記の方法により、右決算期を当期純利益を金1億8400万円と計上し、有価証券報告によると1株当たりの配当金額を金10円と定め(甲第四号証)、平成8年11月29日から平成9年3月31日までの発行株式総数は、11,371,802株であるため、金1億1371万8020円の違法配当を実施し、訴外株式会社ジャレコの経営基盤を弱体化させた。
6、被告等は、かかる違法配当をすることにより、会社の経営を著しく困難にするもので、帝国データバンクにおける評価も著しく低いもので、被告等の行為は不等な業務執行であり、商法第266条1項1号及び5号に違反する。
五、そこで、原告は、訴外株式会社ジャレコ監査役に対し、平成11年3月24日到達の請求書をもって、商法267条に基づいて被告等の責任追及に関し、その支払を求める訴訟を提起するように請求したが(甲第三号証の一、二)、その後30日を経過してもその訴えが提起されていない。
六、よって、原告は被告に対し、商法第267条に基づき、請求の趣旨記載の判決ありたく、この訴えを提起する。